初めて現場に出る人へ 施工手順ガイド 2
法面工の工種別 施工手順ガイド
法面(のりめん)は、切土や盛土でできた人工の斜面です。放っておくと雨と風化で崩れるので、表面を守る工事=法面工を行います。土質と勾配、水の有無で工法が分かれます。工種ごとに「何をする工事か」「手順」「使う機械」「現場で見るポイント」と、その工事で土がどう動くかを図で説明します。
1.法面整形(のりめんせいけい)
切土や盛土でできた斜面(法面)を、設計の勾配と断面に合わせて仕上げる作業です。切土では削って形を出し、盛土では少し多めに盛って(余盛り)削り取って仕上げます。あとの植生や法枠の品質は、この仕上がりで決まります。
手順
- 1丁張り(勾配を示す板)を法肩・法尻に立て、仕上げ面を現地に出す
- 2切土:上から順に削り、丁張りに合わせて面をそろえる
- 3盛土:余盛りした部分を削り取り、面を締める(土羽打ち)
- 4仕上げ面の浮石・浮土を落とし、排水の向きを確かめる
使う機械
バックホウ(法面バケット)。ICT施工ではバックホウに3次元の設計データを入れ、丁張りなしで仕上げます。狭い場所や仕上げは人力。
現場で見るポイント
- 切り過ぎは戻せない。仕様書も「切り過ぎた場合は粘性土で締め固めて整形」としている
- 盛土法面の表面は締固めが甘くなりがち。余盛り→削り取りで密な面を出す
- 雨の前に仕上げ面を放置しない。表面を締めて排水する
ここで土が動く
切土法面の整形で削った土と、盛土の余盛りを削った土が残土になります。量は小さくても、土質が良ければ盛土材として使えるので、捨てる前に使い道を考えます。
2.植生工(しょくせいこう)
法面に草を生やして、根で表面の浸食を防ぐ工事です。土の法面で勾配が緩いときの基本の工法で、種子を吹き付ける方法(種子散布・客土吹付・植生基材吹付)と、芝やシートを張る方法(張芝・筋芝・植生シート・植生マット)があります。吹付の厚さで工法が分かれます。
手順
- 1着手前に土壌の硬さとpHを測る(仕様書で試験が求められる)
- 2法面の浮土・雑物を落とし、凹凸を直す。乾いていれば散水する
- 3種子・肥料・基材を混ぜ、法面に均一に吹き付ける(種子散布は厚さ1cm未満、客土吹付は1〜3cm、植生基材吹付は3〜10cm)
- 4張芝なら、不陸を直して芝を密着させ、目土をかけて芝串で留める(1㎡あたり20〜30本)
- 5養生:乾燥期は散水を続ける。発芽しなければ再施工
使う機械
種子散布はハイドロシーダー(トラック搭載)、客土吹付・植生基材吹付は吹付機とホース。張芝・シートは人力。
現場で見るポイント
- 乾燥期と真夏の施工は避ける。やむを得ないときは散水養生を続ける
- 芝は搬入後すぐ張る。積み重ねたり日に当てたりすると枯れる
- 法肩には耳芝(幅10〜15cm程度)を入れて、雨水が法面に回り込むのを防ぐ
ここで土が動く
客土吹付・植生基材吹付は「土を持ち込む」工事です。基材は製品ですが、客土には良質土が要ります。逆に、法面整形で出た土は含水が低ければ客土に回せることがあります。
3.法枠工(のりわくこう)
法面に格子状の枠を造って表面を押さえ、枠の中を緑化や吹付で埋める工事です。植生だけでは崩れるおそれがある法面、湧水がある法面、長大な盛土法面に使います。工場製の枠を並べるプレキャスト法枠、現場で鉄筋と型枠を組んでモルタルを吹き付ける現場吹付法枠、型枠にコンクリートを打つ現場打法枠があります。
手順
- 1基面処理:緩んだ転石・岩塊を取り除く。盛土面は締め固めて平らに、切土面は切り過ぎないよう平滑に
- 2枠の割付けをして、法面に墨出し
- 3プレキャスト:枠をかみ合わせて滑らないよう積み上げ、必要なら滑り止めアンカーで連結
- 4現場吹付:ラス(金網)を張り、縦横の鉄筋と型枠を組み、交点にアンカーを打って地盤と一体化し、モルタルを吹き付ける
- 5枠内を充填:土砂は締め固めながら、土のうは密に、玉石は隙間をクラッシャランで、またはコンクリートを吹付
使う機械
プレキャスト枠の据付けはラフテレーンクレーン、中詰めはバックホウ。現場吹付はモルタル吹付機・発電機・コンプレッサで、人力が主体。
現場で見るポイント
- 枠の基礎が沈む・滑ると全体が動く。基礎と法尻の処理を先に
- 湧水があるときは監督職員と協議(仕様書の規定)。水を抜かずに塞ぐと裏に溜まる
- 吹付は法面に直角に、上から下へ。はね返った材料の上には吹き付けない
4.吹付工(モルタル・コンクリート)
風化しやすい岩や、植生が育たない法面に、金網を張ってモルタルやコンクリートを吹き付け、表面を覆って守る工事です。見た目は灰色の壁ですが、目的は「表面を風化・浸食から守る」ことで、土圧を受ける擁壁ではありません。
手順
- 1岩盤面のごみ・泥・浮石を落とす。吸水する面は先に水を吸わせる。土砂面は吹付の圧で飛ばないよう打ち固める
- 2補強金網(ラス)を、仕上がり面との間隔を保って法面に固定する(継手の重ね幅は10cm以上)
- 3上から下へ、法面に直角に吹き付ける。厚さを均等に
- 4伸縮目地と水抜き孔を設計図書どおりに入れる
- 5法肩は地山に沿って巻き込み、雨水が裏に入らないようにする
使う機械
モルタル・コンクリート吹付機、コンプレッサ、ミキサ、発電機。高所は足場かロープ作業。
現場で見るポイント
- 裏の水が抜けないと、吹付面が浮いて剥がれる。水抜き孔と湧水の処理が命
- 作業を中断するときは端部を薄く仕上げ、再開時は清掃して湿らせてから打ち継ぐ
- 2層以上吹くときは層の間が剥がれないように
5.鉄筋挿入工(ロックボルト)・アンカー工
法面が滑るおそれがあるとき、地山に穴をあけて鋼材を入れ、グラウト(セメントミルク)で固めて、法面を地山に縫い止める工事です。短い鋼材を多数入れて地山ごと補強するのが鉄筋挿入工、長いケーブルや鋼棒に緊張力を与えて押さえるのがアンカー工です。法枠工や吹付工と組み合わせることが多い工事です。
手順
- 1事前調査:法面の安定、地盤、地中障害物、湧水を確かめる。設計と違えば協議
- 2設計図書の位置・径・長さ・方向で削孔する。削孔水は原則として清水
- 3孔内のスライムを清水で洗い出し、鋼材を所定の位置に挿入する
- 4グラウトを孔の最深部から注入し、孔口から出てくるまで止めない
- 5アンカー工は、グラウトが所定の強度になってから緊張し、試験で緊張力を確認して定着する
使う機械
削孔はロータリーパーカッションドリルやクローラドリル。グラウトポンプ、ミキサ。アンカーは緊張ジャッキ。
現場で見るポイント
- 削孔長や地質が設計と違ったら、その場で協議。定着層に届いていないアンカーは効かない
- 鋼材にさび・油・泥を付けない。付いたら取ってから組む
- 緊張力の確認試験(適性試験・確認試験)を飛ばさない
6.かご工(じゃかご・ふとんかご)
鉄線のかごに石を詰めて法面や法尻に並べる工事です。水を通し、変形に追従するので、河川の護岸や湧水のある法面、法尻の押さえに使います。
手順
- 1床ごしらえ(据付け面を整える)をして、間割りし、かご頭の位置を決める
- 2かごを組み立てて据え、隣のかごと鉄線で緊結する
- 3石を先端から詰め、隙間を少なく。法肩・法尻の曲がる部分が扁平にならないように
- 4詰め終えたら蓋を閉じ、同じ規格の鉄線で緊結する
使う機械
石の運搬・投入はバックホウ、詰め込みと緊結は人力。
現場で見るポイント
- 中詰め石の大きさは仕様書で決まる(じゃかごは15〜25cm、ふとんかごは厚さ30cmで5〜15cm、厚さ50cmで15〜20cm、網目より大きい石)
- 緊結を省くと、かごが開いて石が抜ける
よくある質問
植生工と吹付工はどう使い分ける?
土の法面で勾配が緩く、草が育つなら植生工。風化しやすい岩や、草が育たない法面はモルタル・コンクリート吹付工。植生だけでは崩れるおそれがあれば法枠工で押さえ、滑るおそれがあれば鉄筋挿入工・アンカー工を組み合わせます。
種子散布・客土吹付・植生基材吹付の違いは?
吹き付ける厚さと材料が違います。国交省の共通仕様書では、種子散布は低粘度のスラリーを厚さ1cm未満、客土吹付は高粘度のスラリーを1〜3cm、植生基材吹付は基材を3〜10cmに吹き付ける工法とされています。厚いほど乾燥や硬い地盤に強く、費用も上がります。
法面工で残土は出る?
法面整形で削った土と、盛土の余盛りを削った土が出ます。量は土工全体に比べて小さいですが、土質が良ければ客土や盛土材に回せます。吹付のはね返り材や削孔のスライムは建設発生土ではなく、がれき類・汚泥として扱います。
施工時期に決まりはある?
植生工は乾燥期と真夏を避けるのが基本で、やむを得ないときは散水養生を続けます。芝は霜柱で浮く秋〜冬と、芝焼けする盛夏を避けます。吹付工は湧水と凍結に注意します。
土の行き先は、残土バンクで
法面整形で出る土も、客土で要る土も、投稿すると近くの相手に自動で届きます。国交省の登録簿をもとにした全国の受入地も地図で探せます。投稿・問い合わせ・成立に手数料はかかりません。
参考資料
2026年10月14日時点の公開資料をもとに、残土バンク編集部が構成・図とも独自に作成しました。本文の数値は国土交通省 土木工事共通仕様書(案)に書かれている範囲だけを引用しています。配合・厚さ・緊張力などは設計図書と発注者の仕様書が優先です。
