
この記事のポイント
- 土の出し先は、掘る前に決める
- 量は「地山・ほぐし・締固め」のどれかをそろえて伝える
- 運んだら受領書をもらって、5年とっておく
建設工事で出た土(建設発生土)は、産業廃棄物ではありません。けれども「どこにでも持っていける土」でもありません。2023年の法改正で、工事を始める前に搬出先を決めて確認することが元請の仕事になり、受け入れる側には盛土規制法の許可が関わります。
このガイドは、工事の流れ(掘削 → 積込み → 運搬 → 仮置き → 盛土・処分)に沿って、「土を出す側」と「土を受ける側」がそれぞれの段階で何を決め、何を書類に残すかをまとめたものです。各段階の詳しい記事は順次追加します。
1. 全体の流れ:土はどこで出て、いつ出し先を決めるか

土工の工程は、おおまかに次の順で進みます。
- 掘削:図面の数量(地山土量)に対して、実際に掘ると体積が増えます(ほぐし)。
- 積込み・運搬:ほぐした土量でダンプの台数と運搬費が決まります。
- 仮置き(ストックヤード):工事の時期が合わないとき、一時的に置いて別の工事に回します。
- 盛土・埋戻し・処分:締め固めると体積は地山より減ります(岩は増えます)。受け入れる土地には、盛土規制法や自治体の残土条例の手続きが必要です。
各工程で何をするか、どんな機械を使うかは土工の工種別 施工手順ガイド(図解)にまとめています。
大事なのは、搬出先は工事が始まってから探すものではなくなったことです。次の章で説明する2023年の省令改正により、500㎥以上の土砂を搬出する工事では、再生資源利用促進計画を作る段階(=着工前)で搬出先を書き、適正な場所かを確認することになりました。つまり、土の出し先を決めるのは「掘る前」です。
2. 出す側:搬出先を「先に」決めて、受領書を残す(2023年の改正)
静岡県熱海市の土石流災害(2021年7月)を受けて、建設発生土の扱いは大きく変わりました。出す側に関わるのは、資源有効利用促進法に基づく省令の改正です。
- 2023年1月1日施行:再生資源利用促進計画書を作る対象工事が、土砂1,000㎥以上から500㎥以上に広がりました。計画書は発注者に説明し、現場に掲示します。保存期間は1年から5年に延びました。
- 2023年5月26日以降に契約する工事:計画書に搬出先の名称・所在地を書き、搬出前に搬出先が適正か(盛土規制法の許可の有無など)を確認すること、搬出後に搬出先の管理者から受領書を受け取って保存することが定められました。計画と違う場所に運んだ場合は、最終的な搬出先まで記録を残します。
実務では、次の3点を着工前に揃えておくと止まりません。
- 搬出先の候補を複数持っておく(受入条件・受入可能量・許可の状況)。
- 候補ごとに「どの法令の手続きが済んでいるか」を確認する(盛土規制法の許可、自治体の残土条例の届出、ストックヤードなら登録の有無)。
- 受領書の様式を、搬出先と事前に決めておく。
搬出先の候補を探す方法は大きく3つあります。工事間利用(公共工事どうしで土を融通する仕組み。発注者や自治体の調整)、ストックヤード・処理地(国土交通省に登録された事業者の施設など)、民間のマッチング(土を欲しい人と直接つなぐ)。残土バンクは3つ目で、国土交通省の登録簿をもとにした全国の受入地を地図で探せるほか、「土を出したい」と投稿すると近くの受入先と、土を探している投稿者に自動で届きます。
3. 出す側:土の量と質を、相手に伝わる形にする

搬出先と話すときに食い違いやすいのが「量」と「質」です。
量:地山・ほぐし・締固めをそろえる
土は状態によって体積が変わります。図面の数量は地山、ダンプに積む量はほぐし、盛土の出来形は締固め後です。変化率L(ほぐし率)とC(締固め率)で換算します。たとえば砂質土(L=1.20、C=0.90)で地山2,000㎥なら、運ぶ量は2,400㎥、盛土になると1,800㎥です。受入地の「最大堆積量」がどの状態の数字かを確かめ、同じ状態で伝えてください。計算は土量換算ツールで、土質ごとの変化率の目安つきでできます。
質:建設発生土の区分
国土交通省の「建設発生土利用技術マニュアル」では、建設発生土をコーン指数(土の硬さの目安)などで第1種〜第4種と泥土に区分しています。おおまかには、第1種が砂・礫の良質土、第2種が砂質土・礫質土、第3種が通常の粘性土、第4種が軟らかい粘性土、泥土はコーン指数200kN/㎡未満でそのままでは盛土に使えない土です。区分によって使い道(盛土材・埋戻し・改良が必要)が変わり、受入地が受け入れられるかどうかも変わります。区分が分からないまま持ち込むのが、受入れを断られるいちばん多い理由です。土質試験の結果か、少なくとも「粘性土か砂質土か、含水比が高いか」を伝えられるようにしておきます。
なお、がれきや木くずが混じった土、建設汚泥(掘削工事の泥水など)は建設発生土ではなく、産業廃棄物として扱われます。混ざらないよう分別して仮置きすることが、土を「土のまま」出せる条件です。
4. 受ける側:盛土規制法の許可と、受け入れてよい土
土を受け入れる土地は、2023年5月26日に施行された盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の対象になることがあります。都道府県・政令市などが指定する規制区域(市街地に近い「宅地造成等工事規制区域」と、それ以外の「特定盛土等規制区域」)では、一定規模以上の盛土や土の仮置きに許可や届出が必要です。区域の指定は2024年から2026年にかけて各都道府県で順に進んでおり、同じ県でも指定の時期が違います。
受ける側が最初に確認するのは次の3つです。
- その土地が規制区域に入っているか(都道府県のページで公表されています)。
- 自治体の残土条例(土砂埋立て等の規制条例)の対象か。面積や土量のしきい値が自治体ごとに違います。
- 農地なら農地法、森林なら森林法など、土地の種類ごとの手続き。
手続きが済んでいないと、出す側が省令で求められる「搬出先の事前確認」を通りません。つまり許可を取っている受入地ほど、土が集まりやすい構造になっています。
公共工事の土を受けたい場合は、県が民間の土地を公募・登録する仕組みがあります(長野県の民間受入地公募、山梨県の民間残土処分場登録など)。都道府県ごとの仕組みは公共工事の受入地 公募・登録まとめにまとめています。民間工事の土を受けたい場合は、残土バンクに「土を探しています」と投稿しておくと、近くで土を出したい投稿者に自動で届きます。
5. 仮置き(ストックヤード)という選択肢
出す工事と使う工事の時期が合わないとき、間に入るのがストックヤードです。熱海の災害後、国土交通省はストックヤード運営事業者の登録制度を設け、登録簿(所在地・最大堆積量・登録の有効期間など)を公開しています。登録は「適正に運営されている」ことの目安になり、出す側の事前確認にも使えます。
仮置きで気をつけるのは、仮置きも盛土規制法の「一時的な堆積」として規制の対象になりうることと、仮置き中に雨で含水比が上がって区分が落ちることです。シート養生と排水を計画に入れておきます。
残土バンクの受入地の地図は、この登録簿をもとに全国約1,600か所を掲載しています(データはCSVでも配布しています)。
6. 書類の一覧:いつ・誰が・何を残すか

段階 | 出す側(元請) | 受ける側 |
|---|---|---|
着工前 | 再生資源利用促進計画書(搬出先の名称・所在地を記載)、搬出先の適正確認の記録、発注者への説明、現場掲示 | 盛土規制法の許可・届出、残土条例の届出、受入条件の提示 |
搬出時 | 土質・土量の記録、運搬の伝票 | 受入れの記録、受領書の発行 |
完了時 | 再生資源利用促進実施書、受領書の保存(5年) | 完了の記録、必要に応じて行政への報告 |
7. よくある失敗と、避け方
- 着工後に搬出先を探し始める → 計画書に書けず、確認もできない。候補は見積の段階で持つ。
- 量の状態がそろっていない → 受入地の「残り3,000㎥」が締固め後なら、ほぐしで運べるのは2,000㎥台。換算して伝える。
- 土質が分からない → 持ち込み当日に断られる。粘性土か砂質土か、含水比が高いかだけでも伝える。
- 受入地の許可を確認していない → 事前確認を通らず、後から搬出先を変えることになる。許可の写しをもらう。
- 受領書をもらい忘れる → 5年保存の書類が欠ける。様式を事前に決める。
このガイドの各章は、順に詳しい記事にしていきます。まずは土量換算ツールで量をそろえ、受入地の地図で近くの候補を確かめてください。投稿・検索・問い合わせ・成立に手数料はかかりません。
参考資料
- 国土交通省:建設工事から発生する土の搬出先の明確化等(資源有効利用促進法 省令改正の概要)
- 国土交通省:盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)
- 国土交通省:ストックヤード運営事業者の登録制度
- 農林水産省:土地改良工事積算基準(施工パッケージ型)土量の変化率
※本記事の内容は2026年10月13日時点の情報をもとにしています。法令・条例・料金は改正や地域によって異なるため、実際の手続きの際は必ず各行政機関・事業者の最新情報をご確認ください。
この記事について
残土マッチングサービス「残土バンク」を運営する株式会社暁の編集チーム。残土(建設発生土)の処分・受入・法規制について、公的機関の一次情報をもとに記事を作成しています。編集方針
