初めて現場に出る人へ 施工手順ガイド 3
河川工の工種別 施工手順ガイド
川の工事は「水を安全に流す」ための工事です。堤防を造る築堤、川を広げる河道掘削、岸を守る護岸、足元を守る根固め、堤防を横断する樋門、川底を固定する床固め。公共工事の中でいちばん多く建設発生土が出る分野でもあります。工種ごとに手順と「土がどう動くか」を図で説明します。
1.築堤(ちくてい)
川の水をあふれさせないための堤防を、土を盛って造る工事です。土工の「盛土」と同じ原理ですが、水に接する構造物なので、均質で水を通しにくい土を、層ごとに丁寧に締め固めます。表法(川側)と裏法(住宅側)は芝などで守ります。
手順
- 1堤防の下になる地盤の草木・表土を取り除き、必要なら地盤改良や段切りをする
- 2土を1層ずつ薄く敷き均す(1層の厚さは発注者の仕様書による)
- 3層ごとに締め固め、締固め度を確かめて次の層へ
- 4法面を整形し、天端を仕上げ、植生工(芝)で法面を守る
使う機械
敷均しはブルドーザ、締固めはタイヤローラ・振動ローラ。法面整形はバックホウ。
現場で見るポイント
- 堤防は「水をせき止める土の壁」。石や木の根が混ざった土、含水の高い土は使わない
- 出水期(6〜10月ごろ)の施工は制限がある。工程は渇水期に合わせる
- 既設堤防に腹付け・嵩上げするときは、新旧の土がなじむよう段切りする
ここで土が動く
土が「要る」工事の代表です。河道掘削で出た土を築堤に回す「工事間利用」が理想で、国や県はそのための調整を行っています。良質な盛土材が足りなければ購入土になります。
2.河道掘削・浚渫(しゅんせつ)
川底や高水敷を掘り下げて、流せる水の量を増やす工事です。水の上から掘るのが河道掘削、水中を船で掘るのが浚渫(ポンプ船・グラブ船・バックホウ浚渫船)。公共工事で最も多く建設発生土が出る工事で、出た土の行き先が工程を左右します。
手順
- 1施工前に水位(渇水位・平水位・最高水位)・流速・潮位などを調べ、洪水時の避難場所と退避方法を決める
- 2施工区域に標識と量水標を置き、濁りの対策(汚濁防止膜など)を講じる
- 3バックホウで掘削してダンプに積む/浚渫船で掘って揚土する
- 4掘った土は仮置きで水を切ってから、受入地・築堤・他工事へ運ぶ
使う機械
陸上はバックホウ(ロングアーム)とダンプ。水中はポンプ浚渫船・グラブ船・バックホウ浚渫船と土運船。
現場で見るポイント
- 川の中で船が流されないよう固定し、落とした物は直ちに関係機関と監督職員へ連絡して回収する
- 掘った土は含水が高く、そのままでは盛土に使えないことが多い。天日乾燥や改良を工程に入れる
- 魚や鳥の繁殖期など環境の制約で施工時期が決まることがある
ここで土が動く
一度に数万㎥の土が出ます。受入地の確保が工事の成否を分けるので、県は民間受入地の公募や登録制度で先に受け皿を作っています。残土バンクの地図は、その受け皿探しに使えます。
3.護岸(ごがん)
流れで堤防や岸が削られないよう、法面を覆う工事です。下から順に、護岸基礎(基礎コンクリート・矢板)、裏込め、法覆(コンクリートブロック張り・石張り・法枠など)、天端、小口止めを造ります。
手順
- 1床掘りして基礎を造る(基礎コンクリートの水中打込みは禁止。矢板基礎なら打ち込む)
- 2法面を整形し、裏込め材(砕石など)を締固め機械で締める。必要なら遮水シートを平滑な法面に敷く
- 3ブロックを下から等高に張り(積み)、合端を合わせて胴込め・裏込めコンクリートを充填する
- 4水抜き孔・伸縮目地を設計図書の位置に入れ、天端コンクリート・小口止めで裏込め材の流出を防ぐ
使う機械
床掘りと裏込めはバックホウ、ブロックの据付けはクレーン(またはバックホウ)、転圧は小型ローラ・タンパ。
現場で見るポイント
- ブロック工は法勾配 1:1 より急なら「積」、緩ければ「張」。工法が変わる
- 水抜き孔は設計図書どおり。勾配の定めがなければ2%程度の勾配
- 裏込めを締めずに張ると、後で陥没する。層ごとに締める
4.根固め工(ねがため)・水制工
護岸の足元(川底)が洗掘されて護岸ごと崩れないよう、根固めブロック・捨石・沈床・かごを置く工事です。水制は、流れを岸から遠ざけるために川に突き出す構造物です。
手順
- 1根固めブロックは製作ヤードで打ち、脱型・吊上げは強度が出てから。製作数量が分かるよう記号を付ける
- 2据付けは乱積みなら噛み合わせを良くし、不安定にしない。連結ナットはねじ山をつぶして抜けなくする
- 3捨石は表面に大きい石を選び、噛み合わせ良く配置して、潜水士や測深で凹凸・粗密を確かめる
- 4沈床は下層が終わってから上層を沈める
使う機械
クレーン(ブロック据付け)、バックホウ(捨石投入)、必要に応じて台船・潜水士。
現場で見るポイント
- 水中での施工は見えない。測深・潜水での確認を省かない
- 濁りの防止に努める(仕様書の規定)
- 吸出し防止材は平滑に設置する
ここで土が動く
コンクリートと石の工事で、土はほとんど動きません。ブロック製作ヤードの造成・復旧で土が動くことがあります。
5.樋門・樋管(ひもん・ひかん)
堤防を横断して、内側の水路と川をつなぐ管(樋管)と、水を止める門(樋門)を造る工事です。堤防に穴をあける構造物なので、周りの埋戻しの締固めが堤防の安全を左右します。
手順
- 1堤防を開削し(出水期を避ける)、必要なら地盤改良・基礎工をする
- 2函渠(かんきょ)を現場打ちまたはプレキャストで造り、門柱・ゲートを据える
- 3構造物まわりを層ごとに締め固めて埋め戻す(一層の仕上り厚は30cm以下)。偏土圧がかからないよう左右均等に
- 4護床工・水路工を造り、堤防を復旧して法面を仕上げる
使う機械
バックホウ、クレーン、小型締固め機械(構造物のきわ)。
現場で見るポイント
- 構造物のきわは締固め不足になりやすく、そこから水みちができる。小型機械で丁寧に
- 河川構造物の埋戻しでは、石を1か所に集めない(水密性)
- 湧水・滞水は埋戻し前に排水する
6.床止め・床固め(とこどめ・とこがため)
川底が下がりすぎないよう、川を横断して底を固定する構造物です。落差があるものを床止め(落差工)、小さいものを床固めと呼ぶことが多く、砂防の流路工にも同じ構造が出てきます。
手順
- 1仮締切で流れを片側に寄せ、水替えをして乾いた状態で床掘りする
- 2基礎を造り、本体コンクリート(または鋼製・ブロック)を打つ
- 3上下流に護床工(ブロック・捨石)を置いて洗掘を防ぐ
- 4仮締切を撤去し、流れを戻す
使う機械
バックホウ、クレーン、水替えポンプ。
現場で見るポイント
- 出水で仮締切が流されると工事が止まる。天気と水位を見て工程を組む
- 護床工がないと、本体の下流がえぐれて本体が壊れる
よくある質問
河道掘削の土はどこに行く?
理想は近くの築堤や公共工事への「工事間利用」で、国や県が調整しています。合わない場合は民間の受入地やストックヤードへ運びます。県によっては民間受入地の公募・登録制度があり、残土バンクの「公共工事の受入地 公募・登録まとめ」で確認できます。
護岸の「積」と「張」の違いは?
国交省の共通仕様書では、法勾配が1:1より急なものを「積」、1:1かそれより緩いものを「張」と区分しています。積は壁に近く、張は斜面を覆う工法です。
出水期とは?
洪水が起きやすい時期で、多くの河川で6月から10月ごろです。この時期は河川内の工事が制限されるため、河川工事は渇水期(11月〜5月ごろ)に集中します。
浚渫と河道掘削は何が違う?
水の中を船で掘るのが浚渫、水の上(高水敷や水位を下げた川底)を陸上機械で掘るのが河道掘削です。どちらも川の流せる量を増やす工事で、出る土の性質(含水が高い)も似ています。
土の行き先は、残土バンクで
河道掘削で出る土も、築堤で要る土も、投稿すると近くの相手に自動で届きます。 国交省の登録簿をもとにした全国の受入地も地図で探せます。投稿・問い合わせ・成立に手数料はかかりません。
参考資料
- 国土交通省:土木工事共通仕様書(案)第6編 河川編(築堤・護岸、浚渫、樋門・樋管、床止め・床固め)
- 同 第3編 第2章 第3節 共通的工種(作業土工、根固めブロック工、沈床工、捨石工)
- 同 第3編 第2章 第5節 石・ブロック積(張)工
2026年10月14日時点の公開資料をもとに、残土バンク編集部が構成・図とも独自に作成しました。本文の数値は国土交通省 土木工事共通仕様書(案)に書かれている範囲だけを引用しています。配合・寸法・強度などは設計図書と発注者の仕様書が優先です。
