
この記事のポイント
- 残土の費用=掘る・積む + 運ぶ + 受入費
- 見積もりは、量の単位(地山かほぐしか)をそろえて比べる
- いちばん安いのは、近くで使ってもらうこと
残土(建設発生土)の処分費は、見積書では「残土処分 一式」とひとまとめにされがちですが、中身は掘削・積込み・運搬・受入(処分)の4つの費用の足し算です。公共工事の積算も、民間の見積もりも、この4つをどう数えるかで金額が決まります。この記事では、公共工事の積算の考え方(国土交通省の土木工事標準積算基準の枠組み)を軸に、残土の費用がどう組み立てられるか、どこで金額が動くか、見積書を読むときにどこを見ればよいかを説明します。
積算とは何か:数量 × 単価の積み上げ

積算は、工事を工種に分け、それぞれの数量(㎥、m、t)に単価(1単位あたりの費用)を掛けて足し上げる作業です。公共工事では、発注者が積算基準に従って「予定価格」を作り、受注者はそれに対して入札します。民間工事では受注者が同じ考え方で見積もりを作ります。
残土に関わる工種は、おおむね次の順に並びます。
- 掘削:地山を掘る(単位:地山㎥)
- 積込み:掘った土をダンプに積む(掘削に含まれることが多い)
- 土砂等運搬:現場から処分地・仮置場へ運ぶ(単位:㎥、運搬距離で単価が変わる)
- 残土処分(受入費):処分地に払う受入料(単位:㎥、処分地ごとに単価が違う)
- 整地・敷均し:処分地側の作業(受入料に含むか別計上かは処分地による)
公共工事の土工積算は、「掘削土量と盛土量を出す → 現場内で使う分を引く → 余る分を仮置場か残土受入地へ運ぶ」という流れ(国土交通省の土工積算フロー)で、残土処分は現場発生土が余る場合に限って計上します。足りなければ逆に購入土や改良土を計上します。
数量の決め方:土量変化率で状態をそろえる
残土の積算でいちばん多い誤りは、数量の「状態」が揃っていないことです。土は、掘る前(地山)、掘ってほぐした後(ほぐし)、締め固めた後(締固め後)で体積が変わります。積算基準では、変化率 L(ほぐし率)と C(締固め率)で換算します。
- 掘削の数量:地山㎥
- 運搬の数量:地山㎥で計上するのが基準の原則だが、ダンプの台数(積載)はほぐし土量で決まる
- 処分地の受入料:処分地によって地山㎥・ほぐし㎥・tのどれで請求するかが違う
たとえば砂質土(L=1.20、C=0.90)で地山2,000㎥を掘ると、運ぶ量はほぐしで2,400㎥、盛土になれば1,800㎥です。見積書の「残土処分 2,400㎥」が、地山なのかほぐしなのかで金額は2割変わります。換算は土量換算ツールでできます(変化率の目安は積算基準の標準表)。
単価の決め方:運搬は距離、受入は処分地ごと
運搬費
土砂等運搬の単価は、片道の運搬距離とダンプの種類(10t車など)、通行の条件(市街地=DID区間を通るかどうか)で決まります。積算基準は距離を区分して単価を設定しており、距離が伸びるほど1㎥あたりの運搬費が上がります。自治体の基準には「運搬距離の上限」(例:20km)を置いて、それを超える場合は別途考慮とするものもあります。有料道路の通行料は別計上です。
民間の見積もりでは、運搬費を「ダンプ1台あたり ○円 × 台数」で出すことが多く、この台数はほぐし土量 ÷ 1台の積載㎥の切り上げです。積載㎥は荷台容積と土の重さの両方で決まり、重い土(含水比の高い粘性土)は重量制限が先に効きます。
受入費(処分費)
受入費は処分地が㎥あたりで設定する金額で、積算では「協定を結んだ公共の処分地はその単価、民間の処分地は承諾済みの単価」のように、発注者が処分地ごとの価格を採用します。価格は土質で変わり、砂・礫(第1種・第2種)より粘性土(第3種・第4種)、泥土の順に高くなります。受入料に「捨土整正(敷均し)」を含むか含まないかは処分地によって違うので、見積もりでは必ず確認します。
公共工事では、処分地の候補が複数あるとき「運搬費+受入費(+必要なら土壌調査費)」の合計で経済比較して処分地を決め、設計図書に処分地と運搬距離を明示します。つまり近くて安い処分地があるほど、工事全体の費用が下がる構造です。
残土処分費の内訳:見積書の読み方
項目 | 数量の単位 | 何で金額が動くか | 見積書で確認すること |
|---|---|---|---|
掘削・積込み | 地山㎥ | 土質(硬さ)、機械の大きさ、小規模か | 積込みが含まれているか |
土砂等運搬 | ㎥(地山 or ほぐし)または台 | 片道距離、DID区間、車種、有料道路 | 距離と数量の状態、台数の根拠 |
受入費(処分費) | ㎥ または t | 処分地、土質区分、含水比 | 単位、整地費の有無、土質の前提 |
土質試験 | 式 | コーン指数・含水比・粒度(必要なら汚染調査) | 処分地が求める試験項目 |
諸経費 | % | 共通仮設・現場管理・一般管理 | 直接工事費に対する率 |
見積もりを比べるときは、数量の単位(地山㎥・ほぐし㎥・t)と、受入費に何が含まれるかをそろえてから比べてください。単位が違う2つの見積もりを並べると、安く見える方が実は高いことがよくあります。
金額を下げる順番

積算の構造から、残土費用を下げる手は順番が決まっています。
- 出さない:現場内で埋戻し・盛土に使う。土量変化率を見込んで、余る量を正確に出す。
- 近くで使ってもらう:近隣の工事で土を欲しがっている現場に渡せば、受入費はゼロ、運搬費も短距離になる。公共工事なら工事間利用、民間なら直接のやり取り。
- 土質を上げる:含水比を下げる(天日乾燥、仮置きの養生)だけで区分が上がり、受入費が下がる場合がある。
- 処分地を比べる:運搬費+受入費の合計で比較する。遠くて安い処分地より、近くてやや高い処分地の方が安いことが多い。
- 帰り便を使う:処分地の近くで再生砕石などを買って帰れば、運搬費を按分できる。
2番目の「近くで使ってもらう」は、相手が見つかるかどうかが全てです。残土バンクは、土を出したい投稿と欲しい投稿を地域でつなぐ無料の掲示板で、投稿すると近くの受入先と逆の立場の投稿者に自動で届きます。国土交通省の登録簿をもとにした受入地の地図で、処分地の候補と受入条件を見ることもできます。
公共工事で押さえておく積算上の決まり
- 搬出先の明示:2023年5月26日以降の契約では、500㎥以上の土砂を搬出する工事で、再生資源利用促進計画に搬出先を書き、受領書を保存します。積算で処分地を決めることと、この計画は一体です。
- 仮置場の扱い:仮置場で掘削して再利用する場合、原則として運搬は二重に計上しません(国土交通省の土工積算フロー)。
- 処分先の選定順序:発生抑制 → 現場内利用 → 公共工事間利用 → それでも余る分を処分地へ、という順序で検討するのが発注者側の原則です。
- 変化率は発注者の基準が優先:土質ごとの標準値はありますが、発注者の積算基準や土質試験の値が優先します。
まとめ
- 残土処分費=掘削・積込み+運搬+受入費(+試験・諸経費)。「一式」の中身を4つに分けて読む。
- 数量は土量変化率で状態をそろえる。地山かほぐしかで2割変わる。
- 運搬は片道距離で、受入は処分地と土質で単価が決まる。処分地は「運搬+受入」の合計で比べる。
- いちばん効くのは「近くで使ってもらう」。相手を探す手段を持っておく。
工事の流れに沿った残土の出し方は建設発生土の出し方・受け方 実務ガイド、土質区分は第1種〜第4種 判別ガイドをご覧ください。
参考資料
- 国土交通省 北海道開発局:土工積算の基本フロー(土積計算の考え方)
- 国土交通省:施工パッケージ型積算基準(土量の変化率ほか)
- 農林水産省:土地改良工事積算基準(施工パッケージ型)土量の変化率
- 山口県:建設発生土の処分費・運搬距離の取扱い(2023年3月改定)
- 長崎県:残土処分地の価格と運搬距離による比較(積算基準公表図書)
- 京丹後市:建設発生土の処分先の経済比較(運搬費・処分費・土壌調査費)
- 国土交通省:建設工事から発生する土の搬出先の明確化等(資源有効利用促進法 省令改正の概要)
※本記事の内容は2026年10月13日時点の情報をもとにしています。法令・条例・料金は改正や地域によって異なるため、実際の手続きの際は必ず各行政機関・事業者の最新情報をご確認ください。
この記事について
残土マッチングサービス「残土バンク」を運営する株式会社暁の編集チーム。残土(建設発生土)の処分・受入・法規制について、公的機関の一次情報をもとに記事を作成しています。編集方針
